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伊豆グルメ でぶりんこひーちゃんの夜食講座
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■ つくだ煮を作ろう
レシピ
  • シイタケ
  • マグロ切り身
  • 貝の剥き身
  • ちりめん.....etc
  • 醤油
  • ナンプラー/味醂/砂糖/日本酒/朝倉山椒/粉山椒

なんといっても一番カンタンな夜食といえば、お茶漬けだ。それもつくだ煮があれば、お湯をかけるだけで完成。つくだ煮に味がついているから何の手間も要らない。あとはせいぜいお新香でもあれば上出来だ。で、今回はおいしい御茶漬けのキモとなるつくだ煮そのものを自分で作ってしまおうという試み。ついでにしぐれ煮とちりめん山椒も作る。市販のつくだ煮は冷蔵庫にも入れて貰えないまま何週間も日持ちしなきゃいけないので実に濃い味がついているんだが、自分で作れば塩分控えめにも出来るし、ベタベタ甘くしないでも作れる。もともと佃島で作られたからつくだ煮、江戸勤務の武士が参勤交代で土産に持って帰ったというのがその由来なんだが、自分で作って自分で食う分には別に保存食である必要はないのだ。今の時代、冷蔵庫ってものもあるし。

さいわいにも伊豆は海産物の宝庫だし、山の幸にも恵まれている。ざっと見てまわったところ、シラスとかシイタケとか、自分で作ったら市販の半値以下で作れそうな雰囲気でもある。となれば、あとは勉強だ。おいらは現場主義なので、とりあえず現地におもむく。つくだ煮といえば東京は佃島というのが定番だが、ここはあえて茨城の土浦と京都の錦小路。土浦では背後に霞ヶ浦を控えて、小魚とか小海老とかが大量に獲れる。また、醤油といえば千葉県の銚子が有名だが、水路を経由して醤油を運ぶのにも便利だというので、江戸時代からつくだ煮が盛んに作られていた。今でも名物で、町中につくだ煮屋さんがたくさんある。「土浦の人間はつくだ煮なんか食わないよ。みんな出荷しちゃう」との話だが、最近は健康ブームで塩気のつよいつくだ煮はあまり売れず、副業でウナギの白焼きを作って出荷していたりする。そんな、老夫婦がのんびりやっている店でつくだ煮を購入する。裏通りの小さな店で、店の裏が作業場になっているようだ。イナゴのつくだ煮なんていう下世話な物もある。値段は安い。もっとも、魚の形が揃ってなかったり、煮くずれていたりして見栄えはあんまり良くない。駅前の立派な店だと形が揃っていて値段が高くなる。どちらでもお好きなほうで。もちろん、おいらは裏通りだ。土浦のつくだ煮は素材の味を生かしたシンプルな作りが特徴だ。

更に、対極にあるブランドつくだ煮として京都。京都の人間はブランド品が大好きで、牛肉だったら寺町通りの「三嶋亭」でなきゃ、とか、タケノコだったら、マツタケだったら、とか、やたらこだわる。おいら、ショットバーでバーテン手作りの懐石料理フルコースを食った事がある。妙な街だ。1000年にわたって「消費地」をやってきたので、生産のノウハウは皆無だが、消費のノウハウは豊富なのだろう。そんな京都でも、錦小路というのが有名だ。ここにも何軒かつくだ煮の名店がある。京都は内陸なので、海の幸にはあまり恵まれてない。そこでつくだ煮が名物になった。「京のぶぶ漬け」という言葉があるくらいで京都人はお茶漬けが好きだ。このつくだ煮はお茶漬けで食べるのだろうか、地元の人もたくさん買っている。京都のつくだ煮で特徴的なのは「やたら山椒を使う」という事。何を食っても山椒の味がする。というか、山椒の味しかしない。また「ちりめん山椒」というのも名物なんだが、これは微妙につくだ煮とは違う。水飴とか味醂を使わないのでベタベタしないのだ。醤油と砂糖の量もつくだ煮よりは少ない。また、関西では「水飴・砂糖・醤油を使ったつくだ煮をしぐれ煮と呼ぶ」なんて説もあり、本来は「はまぐり・あさりを甘辛く煮たもの」がしぐれ煮だった筈なんだがなあ、と古い国語辞典を引っぱりだして確かめてみても仕方ない。言葉も食べ物も、日々刻々と変化しているのだ。とにかく、山椒臭い京都のつくだ煮はお茶漬けにすると香り高くておいしい。

他にも、ネットで調べれば、つくだ煮屋さんの通販ページがたくさん引っ掛かるので、そこから蘊蓄を仕入れよう。最後まで煮詰めず、残った汁は「秘伝のタレ」として使いまわしするとか、醤油は何種類か合わせると使いやすく、減塩醤油なんぞも混ぜて使うとヘルシーだとか、山椒はいつ入れても同じだとか、湯煎だと焦げないけど味は直火のほうが良いとか、役に立ちそうなノウハウがいっぱい出ている。ここまで勉強すれば、あとは作るだけだ。で、材料探し。乾しシイタケは小ぶりのドンコがあったのでそれを使うとして、本マグロの赤身、安いタイ製アサリ缶詰、干した小海老、上生乾しのちりめんといったラインナップ。ちょっぴり京都風を気取って朝倉山椒も買ってきた。これはつくだ煮になっていて、ひと瓶が1000円以上もする。高いね、どうも。醤油はウチにある普通の醤油と、あとはタイのナンプラーがあったので、それも使う。白醤油なんていうのも冷蔵庫の奥に隠れていたんで、それも引っ張り出す。つくだ煮らしい照りを出すには水飴を使うと良いらしいのだが、そんなもんが残ると面倒なのでパス。水飴なんて料理にはあまり使わないからなあ。冷蔵庫の肥やしを増やすだけだ。砂糖と味醂があれば何とかなるだろう。

まず、ちりめん山椒。これは京都の食い物なので、あくまでも京都風に作る。関東のつくだ煮になってしまうと野暮ったいので注意。本格的には「ちりめんを油で炒め、酒と水でさっと茹でて塩気と生臭さを抜く。その湯は捨てて、醤油と砂糖で煮る。ベタつくので味醂は使わない」というのが正しいレシピであって、ちりめん山椒の原理主義者はそれ以外のレシピを認めない。せいぜい「ちりめんが高級品だったら茹でこぼしの過程は省略しても良い」程度だ。おいらは原理主義者ではないので、適当にやる。まずは、醤油と砂糖を同量にして煮る。色が濃くなるのを避けるために白醤油とノーマル醤油と半々。朝倉山椒は高いので、ちょっとしか入れない。その分、飛騨山椒を足してやる。朝倉山椒というのは「山椒の若い実を六月に摘んでつくだ煮、または塩漬けにしたもの」であり、飛騨山椒は「秋になって熟した山椒の実を割って粉にしたもの」だ。微妙に違う。ウナギにかけるのは後者。ウチでは死んだ親父の遺言で「ウナギには飛騨山椒を使うべし」ということになっている。冷凍庫で保存した飛騨山椒は香りが高いので、ちょっとで間に合うのも経済的。つうか、庭に山椒が生えているんだったら、その葉っぱでも良い。むかしは葉っぱを使っていたのだ。煮詰まってきたら、焦げ付く前に汁をこぼして扇風機にかけて乾燥させる。こぼすと言っても汁はあとで使うからとっておくように。ちりめん山椒はベタつかない程度の半乾きになったら完成だ。

さて、ちりめん山椒を煮た汁が残ったと思うが、これが「秘伝のタレ」である。ちりめんの出汁がきいて旨味たっぷり。次に、この汁をベースにシイタケのつくだ煮。シイタケが最初になる場合は、カツオ節の出汁を使うと良いかも知れない。醤油もナンプラー混ぜてみたりする。ナンプラーは小魚から作る魚醤というヤツで、日本で言うなら「しょっつる」に似ている。ちなみにタイ語だ。もともとタイでは魚醤を使う風習はあまりなかったんだが、ベトナム向けにニョクマムという魚醤を輸出していた関係で、タイでも使うようになったという話もある。今ではナンプラーなしではタイ料理は語れないが。最近はスーパーでも手に入るようになったね。元が魚なのでシイタケとは違った旨味成分の補給になる。日本酒を足してやると、アルコール分が効いて柔らかく煮えるかも知れない。つうか、シイタケが高級すぎて肉厚でなかなか火が通らない。汁がなくなるたびにカツオ節出汁を補給しつつ二時間。やっと芯まで火が通った。これも扇風機で残った水気を飛ばす。残った汁はまたしても「秘伝のタレ」として流用。今度は小海老でも煮るか。静岡名物の桜海老でもいいけど安い小海老でもかまわない。と、こんな要領で次々につくだ煮を作って行く。本マグロの赤身はお約束で生姜を追加するのも良いね。朝倉山椒は包丁の腹で潰してから入れると香りが立ちやすい。京都風に仕上げるんだったらたっぷり、関東風に仕上げるんだったら入れなくても構わない。

今回は水飴を使わなかったので、表面に照りがない。撮影の時だけ汁を塗ってごまかしている。カメラマンなんてのは乱暴なもんで、平気でサラダ油塗ったりするんだが、これはおいらの夜食なので、そんなことはしない。見てくれを気にするんだったら水飴を入れると良い。つうか、市販のつくだ煮は水飴で艶を出している。また、しぐれ煮の場合は濃口醤油を使うというのがお約束になっているようだ。今回は「あさり」とはまっ赤な偽り、缶詰には「クラム」と書かれていて、原産地はタイ国となっている。つまり、あさりに似た、わけわかんない貝である。安いからいいか。市場で買ったんだが、業務用なのでべらぼうに安い。この貝は、バンコクから南に下ったところで採れる。塩田やら海老の養殖場もある物凄い遠浅の海で、干潟が何qも続く。そんなところなので、貝なんざいくらでも採れるのだ。おいらタイに行くと、この辺の海鮮料理屋でたらふく海老・蟹・貝など食うのが生き甲斐だ。あっちでは、この貝は蒸してナンプラーつけて食う。生臭いといえば生臭いが、慣れると病みつきになる。これは貝なので「つくだ煮」ではなく「しぐれ煮」で薄味にしあげてみた。それもタイつながりでナンプラー多め。元が缶詰なので、タイで海風に吹かれながら食うほどのワイルドな旨味はないが、あっさりして癖がない。値段の割にはイケルかも。

と、こんな具合にどれもそれなりにしあがる。ひとつ注意点としては、ちりめん山椒は「ちりめん」を使うこと。釜揚げシラスではうまく出来ない。つうか、ちりめん山椒にならない。安いちりめんは苦味が出るので、できるだけ新鮮で上等なのが良い。シイタケはもっと安い、薄っぺらなヤツのほうが作りやすいかも知れない。厚手のドンコだと煮るのに時間がかかってしょうがない。安物がいいのはシイタケくらいのもんで、他のつくだ煮では素材の良し悪しがそのまま出来上がりのクオリティに影響する。市販のものより薄味なのでなおさらだ。あとは焦がさないこと。焦げると風味が大きく損なわれるので、くれぐれも焦がさないこと。どうせ汁を切ってから扇風機で乾かすので、ぎりぎりまで煮詰める必要はない。で、残った「秘伝のタレ」は冷凍しておいて次回のお楽しみなのだった。