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伊豆グルメ でぶりんこひーちゃんの夜食講座
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■ 伊豆の名物、ズガニ汁
レシピ/1人前
  • ズガニ(1人当たり1杯〜2杯程度)
  • 里芋、人参、蒟蒻、ネギ、味噌など適量

河津の名物として有名だ。桜は咲いたかね。河津桜。もっともズガニなんてのは伊豆半島どこにでもいる。今回、料理と撮影を手伝ってくれたのは下田生まれの慶応坊やだが「防波堤によくいるよ」と言っていた。沼津の口野に婿に行った山育ちの知人は、毎晩懐中電灯で明日の味噌汁のズガニを獲ってきては「もう飽きたから要らない」と言われていたそうな。

漁業権どうなってるのかね?勝手に獲っちゃいけないとは思うんだが、まあ、それくらいどこにでもいる。伊豆だけじゃない。実は日本中にいる。中国にもいる。中国では上海ガニと呼ばれている。・・・というのは冗談だが、中国のはシナモクズガニという品種で、日本のモクズガニの近縁種だ。陽澄湖産のヤツは特にブランド品で高く、産地の卸値で一匹300円くらい。日本の末端価格で1000円くらいする。普通の上海ガニでも300円くらいするね。一匹ずつ丁寧に縛られてタグまで付いている。贅沢なもんだ。

上海ガニは悪食で有名で、むちゃくちゃ生命力が強い。アメリカの一部では生きた上海ガニは「所持」すら禁止されていて、マリファナやマシンガン以上のご禁制の支那・・じゃなかった品となっている。というのも逃げ出した上海ガニが繁殖して現地のモクズガニの生態を圧迫していて、そればかりじゃない、日本でも東京湾で生息が確認されている。中国船のバラスト水に幼体が混じっていたらしい。これが繁殖するようになったら大変だ、というわけで輸入手続きも厳しくなってしまった。上海ガニは日本のモクズガニより大きいからね。その方が食うところいっぱいあって便利だろうと考えるのは素人らしい。生態系というのは大事だ。

むかしむかし、中国というところに文化大革命というものがありまして、と、昔話になってしまうのだが、おいらの若い頃は造反有理とか毛沢東万歳とか、中国本土が騒々しい時代だった。子供が校長センセを吊しあげて糾弾したり、インテリみんな捕まえて田舎に送ったり、混乱の極みで2000万人が死んだとも言われている。「あの頃は揚子江の上海ガニ、おいしかったね。平和になるとカニが痩せるのことあるよ、ポコペン」とかいう冗談もある。上海ガニは悪食だ。もっとも水の中の生物というのはみんな悪食なのであって、魚なんか自分の口より大きいモノは何でも飲み込んでしまうし、カニは口が小さいのでハサミで切って何でも食べる。何を食っていようが、気にしてたら生きて行けない。ここは万物の霊長、自然界の最上位捕食者らしく威厳を持って食ってやろう。

さて、ズガニは一匹50円〜100円くらいで買える。牡牝サイズによって値が違う。今回は小さくて安いのをたくさん買った。みんな生きて蠢いている。カニは生きているのを料理するものである。網から出すとすぐに逃げるので、鍋の水に放り込んで蓋。火を付ける。カサカサという音を聞きながらナンマンダブと唱えよう。そのうち静かになるので蓋を取ると、カニはめでたく茹だっている。それを取り出してハンマーで叩き潰す。面倒だったら生きたままハンマーで叩き潰しても構わない。ナンマンダブ。一匹だけ、凄く大きいのがいて、おいらを睨みつける。ナンマンダブ。毛の生えたハサミを振りかざして威嚇のポーズ。ナンマンダブ。さて、粉々に粉砕したらミキサーにかける。こうなったらもうただの食材だ、ザマーミロ。

食材になってしまった遺骸を鍋に戻して出汁を取ろう。粉砕してあるので短時間で出汁がとれる。身や味噌は軽いのでフワフワ浮いて来るので、とりわけておいても良い。その場合、エラは捨てること。汁が濁ってきたらじゅうぶんに出汁がとれているので、濾してやる。身や味噌を戻しても良いけど、そんなものどうせ出し殻だから味には関係ないよ。で、具だが、今回は里芋、人参、蒟蒻といったところを入れてみた。ほどよく煮えたらネギ投入。味付けは味噌だけだ。普段、朝の味噌汁に使っている味噌で良いので、これも味を見ながら、濾しながら、溶かしてやる。で、完成だ。

今回、身やカニ味噌は入れてないので、見てくれは単なる味噌味けんちん汁でしかない。でもまあ、味見してみよう。と、ほのかなカニの香りとともに、まったりと濃厚な旨味が口の中いっぱいにひろがる。う〜ん、やっぱりカニは良い出汁が出るなあ。絶品。考えてみればチマチマと身や味噌をほじくり返して食う上海ガニより、ずっと贅沢な食い方である。

ズガニは、他にはうどんで食うのもポピュラーだ。伊豆中央道の料金所からすぐ、いちごプラザの駐車場にあるバラックみたいなうどん屋は、実は隠れたグルメ店として一部で有名だ。店の入口に水槽が置いてあり、カニ汁うどんを注文すると店員が「ごめんね」と謝りながら一匹捕まえて粉砕し、その場で出汁を取ってカニ汁うどんを作ってくれる。ここはかき揚げもその場で揚げてくれるのでよく行くんだが、カニ汁うどんというのもなかなか。ちなみに料金所を通らずに江間のいちご狩りセンター脇からもぐり込むのが無料なので利口だ。つうかジモティはみんなそうしている。もっとも無料で有料道路を使ったり、ズガニを防波堤で拾ってきたりする事ばかり考えてるようでは人間、出世しないので、ちゃんとお金は払った方が良いかとも思う。