伊豆といえばシイタケだ。輸入が増えて押され気味だというが、新鮮な生シイタケだったら産地が一番。中伊豆冷川料金所の近く、萩原シイタケ農園のオヤジに言わせると「ウチのは綺麗な井戸水を毎日かけて育ててるから生でも食える」との話で、試しに囓ってみたら、なるほどマッシュルームの味がした。生で刻んでサラダに良いかも知れない。ここはバーベキューもやっていて、冬になるとシイタケを狙って来る野生のイノシシ、シカなどのジビエも、運が良ければ食えるかも知れない。
生シイタケといえば、『通』に言わせれば「醤油を付けて焼いて食う」のが一番という事になっている。けどまあ「醤油付けて焼いて食う」なんてのは料理とも呼べない雑なシロモノで、たしかに我々ザパニーズは、世界中どこの食材を持ってきても「醤油付けて焼け」ばおいしくいただける事になっている。が、非日本人に言わせると「日本料理は何を食っても醤油の味」らしい。そう言われるとちょっと癪なので、旬の素材を使って手間のかかった料理なんぞを考えてみた。まあ、見慣れた古女房だってセーラー服着せたりメイド服着せたりしてコスプレさせれば美味しくいただける(?)ようなものかも知れない。ホントか? おい?
とりあえず材料の生シイタケだ。中伊豆あたりに仕入れに出動。ここは道ばた系売店が多い土地で、スーパーは一軒、コンビニは二軒しかないが道ばた売店はたくさんある。生シイタケはこれからの時期どこでも入手できる。寒くなると肉厚の立派なヤツが出まわる。夏のシイタケは小さくて肉が薄くて、それはそれで醤油振ってフライパンで炒めるとウマかったりするんだが、肉詰めするには厚くないと物足りない。小振りのシイタケの裏に餡をタップリと盛ってやる。邪魔なのでシイタケの足の部分、石突は取っておこう。石突は干すと出汁を取るのに使えるから捨てないように。
ギョーザとかシューマイとかの中身の事を「餡」と呼ぶんだよね。「具」ではない。どうも甘くないのを「餡」と呼ぶのに抵抗があるんだが。で、その餡の作り方だ。実はおいら、若いころ横浜中華街に住んでいたことがある。ボロアパートの廊下で婆さんから中国語で話しかけられて困ったり、裏通りの鮨屋で華僑の三代目と江戸前鮨食ったりしていたもんだが、そこで学んだシューマイの餡の秘訣を応用する事にした。
フードプロセッサがあると楽なんだが、太いネギの白い部分と、戻した帆立、タケノコの水煮などを細かく切り刻む。タマネギを別にして炒めておくと甘みが出るというのは横浜中華街の裏技。豚肉はメインの食材なので吟味したい。海老を入れるんだったら荒く叩いておく。細切れにしすぎると食感が出ないのだ。もっとも本場中国では乾し海老使うのことあるよポコペン。中国人は海産物については一度干してから戻して使うのことあるね。なぜか干して戻すと旨味が増すのだ。餡の材料がそろったら片栗粉を投入して、酒、ごま油も投入、醤油・砂糖・塩・胡椒などで味を調えて卵の白身をつなぎにして練る。ここはあえて手でじっくりと練ろう。ハンバーグと同じで空気が入るとおいしく出来ないから、練りは重要なのだ。くれぐれもシャモジで簡単に済ませないように。餡が練れたら片栗粉をまぶしたシイタケの裏に盛る。シューマイとは違って、油で揚げるとカリカリになった表面が美味しいので、あまり厚く盛る必要はない。
餡を盛ったらもう一度片栗粉をまぶして油で揚げる。餡の表面がキツネ色になるまで揚げる。シイタケは生でも食えるので火の通りぐあいを心配する必要はない。餡の様子だけを観察していれば良い。醤油と辛子でいただくが、餡にしっかり味をつけておけぱそのままでも美味。酒の肴に絶好だ。ところで所変われば品変わる、タイでは揚げ物には蜂蜜系のタレをかけるんだよね。そんなタイの揚げ物で「プージャー」というのがあって、蟹の甲羅にカニシューマイの餡みたいなのを詰めて揚げたものだが、これはそのプージャーからインスパイヤされた料理と言えない事もない。伊豆のシイタケに中華街の餡にタイランドのアイデア。そんなわけで立派な無国籍料理の完成だ。